
1999年9月8日深夜 東京 池袋
「わし以外のボケナスのアホ殺したるけえのお。わしもボケナスのアホ殺したるけえのお」
「アホ、今すぐ永遠じごくじゃけえのお」
凶行を犯した造田博の言葉である。
事件当日、ニュースで事件を知った。
ニュースを知ってから延々と事件のことを考えていた。
結果、私は巨大なカメラと三脚を用意して現場に向かった。
ニュースで現場の様子を何度も放映していた。その中には供えられた花も写っていた。心ある方が供えていったのだろう。
しかし、私が到着した際に一切が消えていた。
(写真中央右のごみ箱の横にあるのは花ではない。現場では執拗に確認をしたので確かなことである。)
商業施設に囲まれる現場において、いつまでもそのような痕跡を残すことは良しとしないのだろう。
ちょっとどうかしている。
罪もない人が突然殺されたのに。
三脚をセットし、写真機を組み立てた。露出をみながら数カット撮る。
写真を撮りながら、この時間帯に来たことが正しかったと確認した。
テレビ局は現場から匂いが無くなる前に取材を行った。確かにそこには事件直後の空気が写っていたかもしれない。しかし、ナレーターが口にする「何故こんなことが…」という疑問は宙を舞うばかりだ。
しかし、事件の空気が消え、供えられた花が早々に撤去されているこの一枚の写真には凶行の原因の一つが写っているように思う。
造田博を擁護する気などさらさらない。罪もない人を殺しやがって、ふざけんな…と思う。死刑になって当然だ。でも…凶行を犯すまでの言動を省みるに、他にも何か原因があるように確信している。
花が美しければ花を、いい女であれば女を。でも写真ってそれだけじゃない。
おだやかな気持ちでシャッターを切ることもあれば、その逆もある。
それが自分にとって撮るということなのかと思う。