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サクライ

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インド バラナシ  桜井

犬から好かれた理由が分からないままに、その後もしばらく街に滞在した。私を囲んでいたクッタ(犬)の様子を見ていると、誰がボスなのかが分かってきた。私は彼に桜井と名前をつけた。桜井と名付けたのは特に理由はない。なんとなくである。
桜井と周囲の彼らは人やナマズ、豚などガンガーに流れてくるものを食べて好き勝手に暮らしているので日本の犬のように飼われているわけではない。最も犬らしく、ごく自然に生きている。日本のように去勢されるわけでもなく、好き勝手に交尾し、好き勝手に子を育む。寝たい時に寝て、起きたい時に起き、喧嘩し、時に戯れる。
日々、そんな桜井の行動をみて、自分が失ったものを知った。きっと子供の時の自分は桜井みたいだったのだろうと考えたとき、不覚にも涙を流してしまった。
生き物としての本来的な姿を自分はいつから失ったのだろう。

しばらくしてインドのビザが切れるためネパールとバングラデシュに行かなくてはならなかった。桜井に「2ヶ月くらいしたら戻るよ」と伝えて街を出た。

2ヶ月後、バングラを出国してカルカッタ経由でバラナシに戻ってきた。ゴードリアの交差点でリキシャを降りて、大通りから石畳の裏道を通って常宿としているモグリのゲストハウスへ向かった。
いつもの角を曲がり、寝ている牛を避けながら入り口についた。
桜井が待っていた。
バラナシの犬はテリトリー争いが激しい。だから各々が自分のテリトリーで暮らしている。私が泊まっている宿は桜井のテリトリーではなかったのに…。

今度は1ヶ月半程度しかバラナシに居ることができない。1ヶ月半後にボンベイからタンザニアのダルエスサラームに飛ぶことになっていた。だから1ヵ月半は桜井との時間を大事にした。

1ヵ月半後、別れが辛くてサヨナラを言わずに街を出ようと思った。だから出発の日はガートに行かないと決めていた。
荷物をまとめて宿を出た。1ヵ月半前に私を出迎えてくれた日以来、このあたりまで来なかった桜井が寂しそうに佇んでいた。
なぜ出発することが分かったのだろう。。。
桜井の顔を両手で掴んで言った。
「ありがとう…」
桜井は追ってこなかった。ただ、一回吼えた。
今でもあの鳴き声は耳に残っている。

奴に教わったことは多い。奴は病んだ自分の医師であり教師だった。

あれ以来、犬が好きになった。自分も犬になりたいと思ってる。


2006.11.26(Sun) - 旅の写真





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